
【エッセイ】「じゃ、あの場所で」
先日、奥さんと久しぶりに神保町に行った。その帰り、お茶の水から池袋まで歩いた。
本郷あたりにさしかかったとき、東大の卒業式があったらしく、卒業生らしい女性を見かけた。
あの黒い四角い正方形がてっぺんについた帽子をかぶって、ハリーポッターのようなマントを羽織り、「ザ・卒業式」という格好で歩いていた。
それだけでもカッコよかったのだけれど僕たちの少し前を歩くその女性は、なんの目印もない普通の交差点に建つマンションの塀の前で彼氏と待ち合わせをしていた。
メガネとジャケット姿で、バックトゥザ・フューチャーのマーティの現代版みたいな彼氏と一緒になって歩いて行った。
その、なんの目印もない交差点でどうやって待ち合わせたのか。きっと2人にしかわからない「じゃ、あの場所で」があったんだろうと思うと素敵だった。
なんとなく印象に残るシーンだった。