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【エッセイ】杉林に入ったあの日、僕は花粉症になった。

やじま けんじ

24歳の頃、花粉症になった。

なぜ明確に記憶しているかというと、
「あ、これのせいだ…」というのが明確にわかる出来事があった。

当時、釣具屋の通販の仕事をしており、山に渓流釣りに行くことがあった。

社長に連れていってもらうのだが、社長は登山をしていたらしく、山の中をズンズン歩く。

その日も車を止めて山の中をズンズン歩いていた。

季節は3月半ば。花粉症シーズン真っ只中。

ただ、おれは当時花粉症ではなかったので、なんにも気にしていなかった。

歩いていると足に何かコツン、とあたり、
それから黄色いものがフワ〜っと出た。

あ、これ知ってる。テレビとかでみる杉の木がブワーって出すやつだ。

それは花粉が詰まった、杉のたまであった。

それからもおれは、
そのたまをコンコン蹴って黄色い煙を出しながら歩いた。

蹴るたびに、たまは黄色い粉をモワ〜っと出していた。


その後川に出て釣りをして、何事もなく帰ったその夜だった。

夜に布団に入る頃、鼻水が、目のかゆみが、尋常じゃない。呼吸も苦しい。やばい。

なんかわかんないけど、とりあえず風呂に入れば楽になるのでないかと思ったが全く楽にならない。

その時鼻が詰まる酸欠の頭で、昼に蹴飛ばした杉のたまを思い出した。あれだ。

花粉症には人それぞれキャパがあって、一定の量を超えると発症するという。おそらくそれを、その日超えてしまったのだ…


その日からおれはこの時期、目が痒くなり鼻水が出ると、あの日を思い出さずにいられない。

なぜ蹴った。

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やじま けんじ

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